ボランティア・スピリッツ賞(アワード)

ジブラルタ生命・プルデンシャル生命・PGF生命ほか主催/文部科学省後援
PRUDENTIAL SPIRIT OF COMMUNITY(通称:SOC)
ボランティア・スピリット賞(アワード)

子どもたちの未来に寄り添いたい 〜海外医療ボランティアでの出会い、そしてこれから〜

齊藤さくら(受賞時:白百合学園中学高等学校 高等部2年)

第21回ボランティア・スピリット・アワード
SPIRIT OF COMMUNITY奨励賞
米国ボランティア親善大使

子どもたちの笑顔を守りたい

齊藤さくらさんは、助産師を目指しながら、国際医療ボランティアを運営するNPO団体の活動に参加して、医療分野に関わるボランティア活動を行っている。

高校の長期休暇を利用してベトナムとカンボジアでのボランティア活動に参加。ベトナムでは枯葉剤の影響で障がいをもって生まれた子どもたちが入院している病院や孤児院を訪問して、子どもたちと交流するボランティアを行ない、カンボジアでは病院で新生児のケアや手術室で患者に付き添い不安をケアする活動に携わった(※)。

高校1年の春休み、初めて国際医療ボランティアとして訪問したベトナムでは、身寄りもなく病院や施設の一角で暮らす人々や子どもたちと触れ合う。

「枯葉剤の影響で顔を持たずに生まれてきた方などにお会いし、障がいの重さに言葉を失ってしまうくらい驚いたのですが、それ以上にみなさんが生き生きとしていることに心を打たれました。生まれつき両手と片足がない方は、水泳が得意でパラリンピックを目標に励んでいて、『障がいを持っていても悲しいと思うことなく、好きなことに打ちこめるのは、医療スタッフのみんなが、あなたを愛しているよと言って育ててくれたからなんだ』と教えてくれました。周囲の愛情やサポートがこんなにもポジティブな気持ちをもたらしてくれるんだと感じた出来事でした」

また、孤児院では生まれて間もなくHIV感染症で母親を亡くした乳児の世話を任された。

「すごく懐いてくれて、少しでも抱っこからおろそうとするとギュッとしがみついて、『他の人じゃ嫌なの』という気持ちを全身で伝えてくるんです。可愛くて自分の子どものように思えてきて、この子が喜んでくれた時の笑顔が今でも忘れられません。『この子のような笑顔に出会えるようにがんばろう』そう決意させてくれた存在と出会うことができました」

「出発前の空港で突然不安になり、『行きたくない』と泣いていた私は何だったのだろう?人生が一転した一週間でした」と言うさくらさん。その笑顔が、一歩踏み出す勇気を持てば世界は広がるという、シンプルだけれども大切なことを教えてくれた。

※医療関連のボランティアは、訪問した国の法律、NPO団体の活動規範に則り、医師および医療従事者の指示等で行われています。

  • ベトナムでお世話をした男の子。彼の笑顔が活動のエネルギー

異文化×ボランティア

カンボジアでは、文化や考え方の違いに戸惑いながら、現地の方々に衛生の大切さを伝える日々を過ごした。

「屋外で食事をとる方が多く、食べ残しをそのまま捨てると土壌の栄養になるという考え方が根付いていて、病室でも食べ残しをそのままベッドの下に捨ててしまいます。それに虫がたかって不衛生なので片付けなければいけないのですが、ボランティアが片付けてしまうと現地の方の意識を変えることはできません。教えて納得してもらいながら一緒に片付けを行いました」

「全てやってあげること」だけが正解ではない。自分たちが帰国した後、相手が自立して行動できるように考えながらボランティアに関わることの大切さを学んだという。また患者の不安をケアするために立ち会った手術では、言葉が通じなくても気持ちを伝え合うことができると実感した。

「握っている手の力の具合や表情を見ながら患者さんの不安を察して、ゆっくり握り返したり腕の上の方までさすってあげたりして、少しでも不安が取り除けるように気遣いながら付き添っていました。手術の後に『あなたがいてくれて安心した』と言っていただけて、頼りにしていただけたんだと、とてもうれしかったです」

海外での活動で大変だったことは?と尋ねると、

「蒸し暑い中で床にゴザを1枚敷いて枕もないような場所で眠ったり、食生活が違ったり、体力的に辛いなと思う瞬間はありましたが、大変なことはなかったです」と、さくらさん。

ふんわりと周囲を包み込む雰囲気の中に秘めるタフさがとても頼もしく感じられた。

  • 手術室で患者の手を握り、不安に寄り添う

なぜボランティアをやっているの?

さくらさんがボランティアを行う上で最も大切にしているのは、相手に寄り添うこと。

「違いを汲み取って、何ができるかを考えてそれを精一杯やる。それが自分の中でのボランティアの本質だと思っています。独りよがりではなく、相手にとってそれが本当に役に立つのか、必要なことなのかと考えながら行動しています」

好きなことを自身が楽しんでやっているから「辛い、やめたい」と思ったことはないと、ボランティアに対する想いを語ってくれたさくらさんだが、「強いてあげるとすればと」と個人活動であるが故の悩みを打ち明けてくれた。

「周囲の人からの理解が得られにくいです。友達から『何でボランティアをやっているの?』『偽善じゃないの?』と言われて壁を感じたことはあります。まだまだ私ひとりの活動では幅が狭く、社会全体に影響を与えることはできていない。もっと多くの人に伝えるにはどうしたらいいのか、常に考えています」

悩んだ時には、ベトナムやカンボジアで出会った子どもたちの写真を見てモチベーションにつなげる。

「小さな頃から子どもが大好きで、自分や妹より小さな子どものお世話をするのが楽しくて仕方なかったんです。だからこそ子どもたちに必要とされる活動をしたい。産まれる前からお母さんと一緒に子どもの未来に関わっていきたいと思っています」

ボランティア活動を行いながら、より深く医療分野のボランティアで子どもたちと関わっていくために、さくらさんは、助産師の専門資格取得を目指している。

「助産師は、妊娠から出産、そして成長の過程と長く親子をサポートすることができる職業です。助産師になって、次にベトナムやカンボジアを訪問する時には、親子のためのより良い仕組みを作って、現地に残して帰ってこられるようにようになりたいです。だからこそ準備期間も大切にしたいと考えています」

  • さくらさんの周りにはいつも子どもたちの姿が

新しい季節への準備

ボランティア・スピリット・アワード(以下、SOC)が、さくらさんのボランティア活動の新しい扉を開く。

「初めて誰かの前で私の活動や想いを伝える機会を得て、今までの活動を人と共有することができました。お互いのスキルを持ち寄って活動のアイディアを話し合い、相談できる仲間、喜びも悩みも分かち合える仲間に出会えたことで、ひとりでは何もできてないんじゃないか、広げることはできないんじゃないかという今までの不安が解消されました」

さくらさんは、日本のSOCの仲間に推薦されて、2018年5月、米国ボランティア親善大使として、全米表彰式に参加。難病で歩けなくなった自身の辛い経験を基に資金を集め、同じ病気の方々に介助犬を届ける少女。貧困で飢えに苦しむ同級生がいると知って寄付を募り、食事を提供する小学生。自らの手で社会を変えていこうとする世界の仲間たちの活動に心を揺さぶられる。

「全米表彰式で出会った方々は、自身が苦しみや悲しみを感じながら、そこでふさぎこんでしまうのではなく、『自分と同じ思いをさせたくない』と人のためにエネルギーを注いでいる方たちばかりでした。ニュースなどで、世界情勢が危ないと報じられることが多いですが、私は世界中の方々の良心を信じたい。社会を変えるような活動をしているSOCの仲間たちのことを知って欲しい。ここで出会った仲間と協力して何かをしたいと強く思いました」

さくらさんの名前には「日本で一番愛され、みんなに幸せを与えている『桜』の花のように、周りの人に愛されるような人になり、幸せをもたらす人になってほしい」というご両親の想いが込められている。

「元々自分の名前が好きでしたが、全米表彰式でも色々な方々に名前をほめてもらえ、さらに好きになりました!」

誰もが花咲く季節を心待ちにする「桜」。しかし、咲かない時期には地下深く根を伸ばして花咲く準備をする。さくらさんも次の季節に向けて花を咲かせる準備に入った。次に開く「さくら」の花は、どんな人たちに笑顔を届けるのだろうか。

  • 韓国の受賞者 Hanee(ハニー)さんとは、生涯を通じて夢や希望を語り合える親友に