ボランティア・スピリッツ賞(アワード)

ジブラルタ生命・プルデンシャル生命・PGF生命ほか主催/文部科学省後援
PRUDENTIAL SPIRIT OF COMMUNITY(通称:SOC)
ボランティア・スピリット賞(アワード)

メロディに想いを乗せて ~フルートの演奏で地域の方々へ幸せを届けるボランティア活動〜

中学生フルートデュオ ナッツ&リリー
左:早坂菜摘(ブロック賞受賞時:山形県米沢市立第一中学校2年生)
右:平璃々子(ブロック賞受賞時:山形県米沢市立第五中学校2年生)

第22回ボランティア・スピリット・アワード
ブロック賞
第21回ボランティア・スピリット・アワード
コミュニティ賞

小学3年生からずっと一緒

中学生フルートデュオ ナッツ&リリーとして活躍しているナッツこと早坂菜摘(はやさかなつみ)さんとリリーの平璃々子(たいらりりこ)さん。二人は小学校3年生の12月からずっと一緒に活動を続けています。

ナッツさんは、お母さんが持っていたフルートを吹いた時に一目惚れして、リリーさんは、全校集会で演奏する先輩の姿に憧れてフルートを始めました。動機は違いますが、フルートの演奏がしたくて、小学校の吹奏楽クラブに入りました。

「フルートが大好き!」同じ想いを持った二人、気がつけば吹奏楽クラブの活動のない日も休みの日も一緒にフルートを吹いて過ごすようになっていました。

ボランティアデビューは8月15日

二人が揃ってボランティアデビューをしたのは、小学校5年生の夏。高齢者福祉施設に勤めるリリーさんの母、平さおりさんが「おじいちゃん、おばあちゃんたちの前で演奏してみない?」と話しを持ちかけてくれたのがキッカケでした。

「ナッツと二人でフルートを演奏する楽しさがわかってきた時期で、聴いてもらいたい。やってみたい!!って(笑)」(リリーさん)

「フルートが好きで演奏がもっと上手になりたいと思っていたので、自分の力を磨くチャンス。一生懸命やってみようという気持ちでした」(ナッツさん)

自分たちの演奏をたくさんの人に聴いてもらいたかったから、施設でのボランティアをためらいなく引き受けたという二人。リリーさんは幼稚園の頃から、母の勤務先の施設に遊びに行っており、ナッツさんは施設に入所していた曾祖母の所に遊びに行っていたので、高齢者福祉施設でのボランティアはごく自然に始められたと言います。

初めての演奏会では、自分たちが好んで演奏していたJ-POPのヒット曲やアニメソングを披露しました。それは高齢者福祉施設を利用している方々の知らない曲ばかりでした。けれど演奏を聴いてくださった方々は、「がんばれ!」「いい音だね」とたくさんのエールを送ってくれました。

そして演奏後には、「今日、8月15日は終戦記念日です。私たちの世代にとっては1年で一番悲しい日です。そんな日に私たちを励ましに来てくれてありがとう。本当に嬉しかった」と、温かい言葉をかけてくれたのです。

「人前で演奏することの意味が分かっていなかったね・・・」
初めての演奏会で二人は、大切なことに気づきます。

「演奏してみてこれは違うなって思いました。自分が好きというだけでなく、おじいちゃん、おばあちゃんに笑顔になってもらいたいと思いました」(リリーさん)

「私たちの演奏に涙を流してくださる方もいて、聴いてくださる方をすごく意識するようになりました。ボランティアをすることには責任があるんだと気がつきました」(ナッツさん)

演奏会に同行した、ナッツさんの母、早坂佐知子さんは初ステージを振り返ります。

「ボランティアに招かれて、子どもたちはとてもいい経験をしました。親である私たちでさえ、終戦記念日だということを忘れてしまっている中で、一番辛い思いをしてきた人たちが、子どもたちに、優しく語りかけてくださいました。演奏させていただける上に、ここは人生で大切なことを気づかせてくれる場所、子どもたちを育てていただける場所だと感じました。『ありがとう』と言っていただきましたが、感謝すべきは私たちの方だと思いました。」

そこから二人は、高齢の方々が好きそうな曲の楽譜探しや、季節の話題を取り入れた進行などを考えるようになりました。小学生だった二人にとって、相手の気持ちを考えながら演奏会を作りあげていくことは、簡単なことではなかったと思います。けれど二人は、投げ出すことなくできることを積み重ねていったのです。

  • メロディには二人の心が宿っている。

音楽が流れる幸せな時間

取材の日に訪問した施設は、ナッツ&リリーが初めてボランティアで演奏した場所でした。半年ぶりに訪問する施設で、アンコールを含め7曲を演奏しました。

出だしは、少し緊張気味なのかな?と思われる部分がありましたが、さすが小学生からデュオを組んでいるだけあって1曲目の演奏が終わる頃には呼吸がぴったり合ってきます。

利用者のみなさんは孫のような年齢の二人が奏でる「夏の思い出」や「ゴンドラの唄」、「七つの子」に聴き入っていました。目を細めてとても幸せそうな表情をする人、目尻を涙でぬらす人、リズムに合わせて手拍子をする人、みなさんが思い思いに演奏を楽しみ20分間のステージはあっという間に過ぎていきました。

ステージを降りた二人に今日のステージの出来栄えを聞いてみると、

「60点くらいです。進行のトークが飛んでしまったので、演奏だけでなく進行も上手くできるようになりたいです」(ナッツさん)

「演奏のミスが目立ったので50点です。毎回、反省ばかりです。『ありがとう、また来てね』と言っていただけるのでがんばれます」(リリーさん)

「それでもみなさんに楽しんでもらえたようなので、安心しました!!」と、声をそろえて中学生らしい笑顔を見せてくれました。

「反省があるから、次の演奏はより良いものになる」と前向きに捉える姿にプロ魂を感じます。

この施設からスタートした活動は、高齢者福祉施設を中心に口コミで広がっていきました。フルートは楽器自体小さく持ち運びが容易でどんな場所でも演奏しやすいことも手伝って屋内、屋外問わずたくさんの場所に出かけることができました。

  • 施設の方が作った手作りのボード。

フルートはパートナー

中学生になって、別の学校に通うようになってからも二人は時間を合わせて練習を重ね、年間20回近く演奏会を行っています。勉強や部活動も大切にしながら、ボランティアを続けるために時間の使い方を意識して行動するようになったと二人は言います。

地元の人気者になったナッツ&リリー。2018年の夏には、地域で昔から愛されている夏のイベント「水上花火大会」のゲストとして招かれて4,000人もの人たちの前でフルートを演奏しました。

「今までで、一番がんばりました。たくさんの人の前で吹くのは、とても緊張しましたが、みなさんが楽しんでくれていると感じることができたので、演奏していて気持ちよかったです」(ナッツさん)

「演奏できる場所が増えるということは、演奏を聴いてくれる人が増えるということ。それが嬉しいです」(リリーさん)

心に響く音楽を届けるために努力しているのは、選曲や進行の工夫だけではありません。フルートは大切なパートナー。二人は、音色を磨くことでより良い演奏を心がけています。

「遠鳴りといって、遠くに離れていても間近に感じることができる音色があります。それを目指しています。楽器の持っているよさ、本来の音を生かせるような・・・いろいろな演奏会やプロの音を聞いて、自分ならではの音を極めていきたいと思っています」(ナッツさん)

「フルートは、自分の吹いている音を指で感じられる特徴があります。それを生かしながら、音の厚みや強弱、音量に自分の感情を込めて、聴いてくださる方の心に届けたいと思っています」(リリーさん)

奏者としてこだわり、自身の成長を目指すこともまたボランティアに欠かせない要素だと二人は教えてくれます。

  • 早坂菜摘さん(ナッツ)
  • 平璃々子さん(リリー)

ボランティアは特別なことじゃない

自分たちのボランティアは、特別なことではないと言う二人。

「ボランティアはやろうと思えば誰でもできること、誰かがゴミを拾えば、歩いている人が気持ちよく歩ける。私たちの活動もそれと一緒で相手が気持ちよく過ごせるようにと思ってやっています」(リリーさん)

「中学生くらいの年代だと、今いる場所が世界の全てだと思ってしまう所があります。私たちはボランティアをやっているおかげでみんなより、少し広い場所を見ることができるので、『狭い世界を飛び出してみようよ。いろいろな経験ができるよ』と伝えたいです」(ナッツさん)

これからもナッツ&リリーの奏でるフルートの音色は、たくさんの人に笑顔をもたらすことでしょう。成長著しい二人の活動を見守っていきたいと思いました。