ボランティア・スピリッツ賞(アワード)

ジブラルタ生命・プルデンシャル生命・PGF生命ほか主催/文部科学省後援
PRUDENTIAL SPIRIT OF COMMUNITY(通称:SOC)
ボランティア・スピリット賞(アワード)

人は歩いた分だけ人と出会える

近藤 奈々

(受賞時:愛知県大口町立大口中学校3年生)
ボランティア・スピリット・アワード
第22回ブロック賞
第21回SOC奨励賞
第20回ブロック賞

背中を押してくれた出会い

地域での音楽演奏ボランティアや海外の子どもたちへ支援活動ボランティアなどを行っている近藤奈々さん。

「面白いことが好き、しゃべるのも好き、よく笑う。だから人と仲良くなるのがすごく得意なんです」と明るく取材に応じてくれたた奈々さんに、中学時代のボランティアを振り返りながらお話を伺った。

小学生の頃からボランティアに興味を持ち、地域のイベントの手伝いを行っていたという奈々さんが、本格的にボランティア活動を始めたのは中学1年の時だった。学校のJVC(ジュニア・ボランティア・クラブ)に入り、福祉施設で配膳の手伝いやレクリエーションなどの定期交流を行うようになる。

「高齢の方々と関わりを持つようになって、人が笑ってくれるっていいな。自分の得意なことで高齢者の方々に喜んでいただけるようなボランティアをやってみたいと考えるようになりました」

奈々さんの背中を押す出会いが、中学1年生の秋に参加したSOCのブロック表彰式でもたらされる。見学に来ていた第14回OGの井野友香さんが、「私の勤めている名古屋の施設にもボランティアに来てくれませんか?」と、奈々さんに声をかけてくれたのだ。

そこで奈々さんはJVCの枠を越え、得意とする音楽演奏(ウクレレ、ギター、ピアノなど)と歌を届けるボランティアに挑戦する。音楽演奏が得意と言っても高齢の方々が好みそうな演歌や歌謡曲を知らなかった奈々さん。事前に施設を訪問し、曲をリサーチするなどして準備に時間をかけた。この時、奈々さんの強い味方になってくれたのが隣に住む祖母だった。

「お祖母ちゃんに相談しながら、高齢の方が好きそうな曲を決めていきました。美空ひばりさんの歌は間違いないとか、津軽海峡冬景色、瀬戸の花嫁、二人酒、涙そうそう、いくつかの曲をピックアップしたのですが、二人酒なんて聞いたこともなくて(笑)お祖母ちゃんが歌うメロディーや動画サイトで、曲を覚えてギターを練習しました」

演奏と歌、ひとりでこなす奈々さんを、施設の方々は温かく受け入れ、ステージの周りにはたくさんの手拍子や笑顔が生まれた。

「こんなに喜んでもらうことができるんだ!」

初めてのステージは、それまでの不安が吹き飛ぶ楽しい時間だったと奈々さんは言う。

「大口町の高齢者福祉施設でもボランティアをやりたい!」

奈々さんは、すぐに地元の施設に電話をかけ、新たな訪問先を探した。そこには奈々さん地元への想い、暮らす人たちへの想いがあった。

「大口町が好きです。『ご近所だね!』と私のことを身近に感じてもらうことで、心が近づきますし、町への恩返しにもなると思ったんです。ギターを担いで出かけて、演奏が終わったら、お茶を飲みながら話をして、『ありがとうございました!』と帰ります。40分ずっと歌っているのは大変ですが(笑)。相手も自分も楽しい時間になるように心がけています。『孫が来てくれたみたいで嬉しい』『奈々ちゃんが次に来たときも会いたいからずっと長生きしているね』そんな風に喜んでくださり、会いたいと思ってくださる方がいる限り続け行きたい一番大切な活動です」

暮らしの中に溶け込むようなボランティアをしたいと言う奈々さん、名古屋と大口町の二つの施設では、奈々さんの歌声と入所者の方々の笑い声が優しいハーモニーを奏でている。

  • 高齢者福祉施設での音楽演奏「なないろ演奏会」

できない理由を探さない

この表彰式では、もう一つ奈々さんの背中を押した出会いがあった。ストリート・チルドレンに目を向けたボランティアを行っている第18回米国ボランティア親善大使の櫛部紗永(くしべさえ)さんのスピーチだ。

「小学校の授業で子どもの貧困問題やゴミ山で暮らす子どもたちについて知り、関心を持っていました。私は何も知らないで過ごしてきてしまったと、子どもたちの暮らしぶりが頭から離れなかったんです。もっと広い世界に目を向けなければと思っていた所に、櫛部さんの『やりたいと思えばやれる』という言葉が飛び込んできました」

奈々さんは、すぐに想いを行動に移す。中学生の海外支援ボランティアを受け入れる組織がほとんどない中、県外のNGO(非政府組織)の代表に直接交渉し、中学2年の春休みを利用して、フィリピンに出かけ、児童擁護センターや小学校でボランティアを行った。

その行動力だけでも素晴らしいことだが、奈々さんのすごいところはそれだけではない。

「短期間だけ現地の子どもたちと交流して終わりにしたくない。継続的に関わっていくことが私の目指すボランティアだと考えていたので、出かける前に生徒会に掛け合って『Dream Bridgeプロジェクト』を立ち上げ、学校のみんなにもボランティアに協力してもらえる仕組みを作りました」

『Dream Bridgeプロジェクト』とは、経済的に恵まれないフィリピンの子どもたちに文房具やリコーダーを贈るプロジェクトだ。生徒会のプロジェクトとして運営にあたり、使わなくなったたくさんの文具やリコーダー(32本)を集め、ボランティアに出かけた際に、フィリピンの子どもたちに手渡した。

「自分が新しいランドセルをもらってワクワクしたような気持ちを、子どもたちにも感じて欲しかったんです。文房具を手にした時の子どもたちの笑顔は忘れることができません」

フィリピンの子どもたちから届く「サラーマ!(ありがとう)」と書かれたポストカードは、活動の原動力になると奈々さんは話してくれた。

  • フィリピンのスラムで子どもたちに囲まれて
  • フィリピンの小学校ではリコーダーの授業にも参加した

行動を起こせば周りも変わる

奈々さんが、『Dream Bridgeプロジェクト』を生徒会の企画として学校全体を巻き込んだのには、もう一つの想いがあった。

周りにいる生徒の多くは部活動や勉強に注力しており、課題意識を持ってボランティアに取り組むことはなかった。そのような中で、奈々さんの活動は、「なんでボランティアなんかやっているの?」「そこまでやる必要があるの?」と好奇の目にさらされたのだ。

「自分が思ったこと、やりたいことをやっているので、周囲にどう思われても、悩むことはなかったのですが、自分と同じように行動を起こせる中学生が増えれば、よりよくなるのかなと思ったのです」

なぜその活動に取り組むのか、なぜ必要なことなのかフィリピンから帰国後も、奈々さんは、ゴミ山の現状や手渡した文房具を手にして喜ぶ子どもたちの様子などを校内で発表し協力を呼びかけ続けた。

「発表したことで『私にもできるかな』『来年JVCに入ろうかな』と言ってくれる人も出てきました。きちんと伝えることで人の心を動かすことができる。「伝える」ことも、またボランティアだと実感しました」

奈々さんの想いは、『Dream Bridgeプロジェクト2』として実を結び、次の年も校内で集めた971本の筆記用具と111個の消しゴムをフィリピンの子どもたちに贈ることができた。そして、奈々さんの卒業後もこのプロジェクトは、後輩たちに引き継がれる。

  • SOCで出会った仲間の企画に参加し、演奏を披露

自分の気持ちを信じる

高齢者福祉施設での音楽演奏ボランティア、フィリピンの子どもたちへの支援。一見かけ離れた活動に見えるが、どちらも奈々さんが大切にしている「相手の気持ち、想いに寄り添う」ことに変わりはない。

「人は歩いた分だけ人と出会えます。SOCの表彰式での出会いがなければ、音楽演奏ボランティアも『Dream Bridgeプロジェクト』もなかったかもしれません。人と出会うことで、自分のやりたいことがはっきりと見えてきたことが私にとっての一番のチャンスとなりました。行動することをためらっている人がいるのなら、『やりたい』という自分の気持ちを信じて、挑戦して欲しいと思います」

高校生になったら、よりたくさんの地域の方々と交流できるように、訪問する施設を増やしたいと笑顔を見せてくれた奈々さん。

「中学生だから」「難しそうだから」、「○○だからできない」を理由にしない強さと行動力をもって、これからもボランティアの道を拓いて欲しい。

  • 奈々さんは、高校生になってもボランティアへの想いは変わらないと話してくれた