ボランティア・スピリッツ賞(アワード)

ジブラルタ生命・プルデンシャル生命・PGF生命ほか主催/文部科学省後援
PRUDENTIAL SPIRIT OF COMMUNITY(通称:SOC)
ボランティア・スピリット賞(アワード)

ノシバで被災地を緑に

京都府立桂高等学校 TAFS「地球を守る新技術の開発」班
第17回ボランティア・スピリット賞 SOC奨励賞受賞

宮城へ

桂高等学校 TAFS「地球を守る新技術の開発」班は、自分たちが研究・開発した「ノシバ(*)を効率よく生産する技術」を用い、緑化活動を行っている。それが新聞に取り上げられたことで、2012年、活動が被災地・宮城へとつながっていった。
津波の塩分を含んだ堆積土には、一般的に植物は育たないと言われている。しかしノシバは塩分に強く、アルカリ性にも強い適応能力が高い植物だ。なんとか堆積土の緑化や防波堤に利用できないかと、宮城県の除塩企業から相談が持ち込まれたのだ。被災地で生育実験を行ったところ、ノシバは堆積土でも育成することが判明する。ノシバを利用した土壌緑化の実現に向けて動き出した。
(*)一般的に「芝」と呼ばれるイネ科の植物。

TAFS「地球を守る新技術の開発」班のみなさん

宮城固有のノシバを探せ

生徒らは、宮城県固有のノシバを使うことを提案する。生徒たちが以前に行った奈良の若草山や京都の豊国廟(豊臣秀吉の墓)での研究から、鹿が多く生息する土地では土地固有のノシバが繁殖しやすいというデータが導きだされていた。宮城県・牡鹿半島の金華山は、江戸時代以前から500頭以上の鹿が生息していて、若草山や豊国廟と類似する環境にある。
「ひょっとしたら金華山には、固有種が自生しているかもしれないって思ったんです。せっかくなら土地固有のノシバで土壌を緑化したいって」。
40名の生徒たちが夜行バスで現地に向かい、種子採取にあたった。
「金華山は、鹿がのんびり草を食べていて、すごくのどかで震災があった感じじゃなかったんです。でも、ところどころ崖が崩れていたり、港には何もなかったりして・・・ショックでした。手伝いに来てくれた宮城の学校の子たちとも話をして、宮城がいまどういう状態なのか聞きました。軽い気持ちで採取に出かけたのですが、考えることがたくさんありました」。
DNA鑑定の結果、生徒たちが採取してきた種子は固有種であることが特定され、本格的な芝生産が始まる。

金華山のノシバを再現

現在、桂高校の圃場(ほじょう:ノシバを栽培する畑)では、金華山から持ち帰った種子からノシバ1万ポット(約1,000m²分)を育成している。それだけでは足りない。そこで、協力を申し出てくれた宮城県小牛田農林高等学校(こごたのうりんこうとうがっこう)や鉢物生産組合にノシバの発芽技術を伝授。京都と宮城で3万ポット(約2,000m²分)を超えるノシバが育っている。

ノシバの苗(写真は京都の固有種)

緑の大地、緑の防波堤を目指して

2014年6月、生徒たちは再び宮城を訪れ、小牛田農林高等学校の生徒たちと一緒に、東松島の試験圃場にノシバの苗木の植え付けを行う予定だ。
「宮城に行って少しでも被災地の力になりたいと思う。金華山にノシバが広がっているのを見て、僕らが目指す最終風景はこれだって、被災地もいつかこうなればいいなって思っています」。
生徒らは、継続的に刈り込みや除草に出かけノシバを増やし、3年後にはおよそ20万m²のノシバが育つ見込みだ。圃場での育成が成功すれば、近い将来、堆積土壌の緑化そしてノシバに覆われた緑の防波堤が実現する。被災地の希望の種は今、芽吹き始めた。

  • ノシバの植え込み風景