ボランティア・スピリッツ賞(アワード)

ジブラルタ生命・プルデンシャル生命・PGF生命ほか主催/文部科学省後援
PRUDENTIAL SPIRIT OF COMMUNITY(通称:SOC)
ボランティア・スピリット賞(アワード)

秩父も福島も同じ空でつながっている

秩父元気プロモーション(埼玉県立秩父農工科学高等学校)
第17回ボランティア・スピリット賞 ブロック賞受賞

秩父に元気を!

『秩父元気プロモーション』は、その名の通り、元気な高校生が、秩父の広告塔となって様々な場所に出かけ、「秩父の元気を創出しよう!」という団体だ。

秩父をもっと元気に!
『秩父元気プロモーション』のみなさん
りっぱな太白芋!

この日は、秩父特産のサツマイモ『太白芋(タイハクイモ)』を収穫していた。中が白くねっとりとした食感の『太白芋』。その多くは『干し芋』に加工されていたが、食文化の変化とともに需要が減少。「地域ゆかりの農作物の火を消してはいけない」と、メンバーは『太白芋』を栽培。地元企業とコラボした菓子や焼酎の商品化に携わるようになった。

作業中、傷つけてしまった芋を前に、「お芋さんに、ごめんなさいは?」と声があがる。メンバーには、大地の恵みを大切に扱おうという気持ちがあふれている。

かーちゃんの懐に飛び込む

秩父を中心に活動しているメンバーだが、3年前の東日本大震災を機に福島県の阿武隈(あぶくま)地域の人たちと交流を始めた。
被災地に対して「農業を通じて、何かできないだろうか?」「必要とされている支援ってなんだろう?」「現地の人たちの声を聞きたい」。メンバーは福島へ向かい、阿武隈地域から一時避難をしている女性農業者の集まり『かーちゃんの力プロジェクト協議会』と出会う。かーちゃんたちと最初にしたのは、カラオケ。「ほら、みんな歌って」と、一緒に熱唱した。「えぇっ!!?」と思う経験だったが、お手製のお茶受けをつまみながら、おしゃべりをしているうちに、自然と距離が縮まった。そこで帰れなくなった故郷の話を聞いた。
「阿武隈地域に昔から伝わる農作物が、土壌汚染や避難で作れなくなってしまったそうです」「冬場の厳しい冷え込みを利用した凍み(しみ)文化について教えてもらいました」「行事や食べ物の話をたくさんしてくれました」。阿武隈地域の暮らしについて聞いた彼らは、「失われそうな、食文化を残したい」と、『食文化』の疎開を計画する。

声をかけられることが増えました

『凍み大根』と『オヤマボクチ』を疎開

秩父農工科学高等学校は、標高200メートルの山あいにあり、阿武隈地域と気候が近い。この環境を利用してメンバーは、まず『凍み大根』の製造に取りかかる。大根を日光や風にさらして、じっくり仕上げる方法は、福島に出かけて、『凍み大根』作りの名人のかーちゃんから指導を受けた。試行錯誤を重ねた結果、秩父でも『凍み大根』が作れることがわかった。
できあがった『凍み大根』を福島に届けて試食してもらった。「おいしいね」「ほっとする故郷の味だ」と、阿武隈地域の人々の笑顔が嬉しかったとメンバーは、顔をほころばせた。
メンバーには、忘れられない光景があるという。復興が進む中、波打ち際にとり残されたままの自動車。「あの自動車に乗っていた人は助かったのかな・・・」。時が止まってしまったような海を前に涙を流した。この経験が、阿武隈地域の人たちへの想いを強くする。

手をかければ応えてくれる!
体力がつきます!

『凍み大根』の製造に成功したメンバーは、次に野草『オヤマボクチ(ごんぼうっ葉)』の疎開を試みる。『オヤマボクチ』は、阿武隈地域の伝統食『ごんぼうっ葉餅』に欠かせない。それを味わってほしいと思ったのだ。しかし、生徒らは壁にぶつかる。阿武隈地域に生息する『オヤマボクチ』は、放射線の影響を受けている可能性があり、苗の確保が難しい。やっと手に入れた苗は7株。栽培や保存について学ぶため、かーちゃん2名を秩父に招いて勉強会を開催した。
「手をかければ、かけただけ応えてくれる。成長が見えるから、やりがいがあります」。いつの日か、阿武隈地域に『オヤマボクチ』を戻せるように少しずつ栽培量を増やしている。

阿武隈地域発、秩父へ

『凍み大根』や『オヤマボクチ』を阿武隈地域に戻すには、長い時間がかかる。それらを秩父に根付かせていくこと、新しい文化として継承することも大切だとメンバーは気づく。
そこで、地元秩父のレストランと協力し『凍み大根』を使ったメニューを試験的に提供してPRを行った。また、農家に『凍み大根』の製造を呼びかけた。最近では、秩父産の『凍み大根』が取引されるようになっているそうだ。阿武隈地域の『食文化』が、秩父に新しい『元気』をもたらした。
「活動の原動力は、人とのかかわり。一緒に行動することで、つながりができる。福島の人たち、地元の人たち、みんなが声をかけてくれることが励みです」。メンバーの心の中には、秩父そして阿武隈地域、二つの故郷が育まれていくことだろう。
*『秩父元気プロモーション』は、第18回ボランティア・スピリット賞(2014年秋)では、『コミュニティ賞』を受賞しました。

秩父の自然に抱かれて