障がいのある子どもたちとご家族のための特別な夜 〜ドリームナイト・アット・ザ・ズー よこはま動物園ズーラシア〜

障がいのある子どもたちとご家族のための特別な夜 ~ドリームナイト・アット・ザ・ズー よこはま動物園ズーラシア~

障がいのある子どもたちとそのご家族を動物園に招待し、気兼ねなく楽しんでいただく国際的なプログラム「ドリームナイト・アット・ザ・ズー(以下、ドリームナイト)」。オランダのロッテルダム動物園が、ガンを患った子どもたち175人を閉園後の動物園に招待したことから1996年に始まり、世界38カ国279の施設で開催されている(2016年6月現在)。

2016年6月4日、751組3,009人を迎えて12回目のドリームナイトを開催したよこはま動物園ズーラシア(以下、ズーラシア)。事業推進係 須田 朱美係長と松山 薫さんにお話を伺った。

よこはま動物園ズーラシア 事業推進係
松山 薫さんと須田 朱美係長

■ ドリームナイト・アット・ザ・ズー  よこはま動物園ズーラシア
 【対象】
  身体障害者手帳・療育手帳(愛の手帳)・精神障がい者保健福祉手帳をお持ちの方とそのご家族、
  または個別支援学級へ通学されている方とそのご家族(原則)

日本で最初のドリームナイト・アット・ザ・ズー

ズーラシアは、日本で初めてドリームナイトのプログラムを導入した動物園だ。10カ月にわたり、欧州の80カ所の動物園・水族館における教育活動を調査し学んでいた長倉 かすみさん(現・公益財団法人横浜市緑の協会 動物園部調整課係長)の発案によって2005年に第1回目の開催が実現した。

「参加者の中には、暗がりに強い不安を感じて歩けなくなってしまう子どもさんもいます。照明の付け方ひとつにも試行錯誤しました。車いすを利用している子どもさん、自閉症の子どもさんなど、障がいの特性にあわせたコミュニケーションの図り方について講習を受けて、みんなが安全かつ安心して来園できるように、手探りで進めていました」と、第1回目から関わってきた須田さんは当時を振り返る。

園内を巡ると、車いすなどで移動しやすいように石畳にシートが敷かれていたり、動物の骨格標本や毛皮などに触れて動物を感じるコーナーが設置されていたりと、普段の開園時にはない工夫がなされている。

「来園されたお客さまから、たくさんの意見をいただきます。年々、設備は整ってきていますが、完成形ではありません。課題にぶつかりながら改善を重ねています」と、須田さん。

今年は、人ごみが苦手な子どもやストレッチャー、車いすで来園する子どもたちに少しでも快適に楽しんでもらえるようにと、「アフリカのサバンナ」エリアを開放して園内の混雑緩和を試みた。

こうした動物園スタッフの想いに呼応するように園内では、「キリンやライオン(サバンナエリア)が見られてとっても良かった!!」と、子どもたちの喜ぶ声が聞こえる。

■第1回ドリームナイト・アット・ザ・ズー開催にむけた準備
 ・園内のバリアフリー化、夜間照明の拡充
 ・動物を見るだけではなく、触覚・聴覚などに訴える展示の工夫
 ・ボランティア(福祉・看護の有資格者)の配備の検討
 ・近隣病院へ緊急時の受け入れ依頼
 ・障がいの特性に応じた対応スキルの習得

  • のんびり動物園を散策し、動物との触れ合いを楽しむ子どもたち

ドリームナイトの魅力は「笑顔」

突然走り出したり、大声を出してしまうからと来園をあきらめていたご家族や混雑の中での移動をためらっていたストレッチャーのご家族、障がいがあることを理由に動物園から足が遠のいていたご家族たちが、この日はのんびりと園内を巡って楽しんでいる。

「子どもさんだけでなくご家族みなさんが、ニコニコしているんです。動物園のスタッフも『今年も来たよ!』『ありがとう、楽しかったよ』と声をかけていただけるのでとても嬉しいです。お互いに『ありがとう』と思いあう気持ちがいいなって。動物園で働いていて一番大好きな企画がドリームナイトです。関わっているみんながこの日を迎えるのを楽しみにしています。こういう企画はなかなかないと思います」と、松山さん。

「こんにちは」「いってらっしゃい」「ありがとう」。気さくに声をかけ合って、心と心が笑顔で結ばれていく。

当日、ボランティアで参加した当社のスタッフも子どもたちとご家族のキラキラ輝く瞳と明るい笑顔にパワーをもらい自然と笑顔がこぼれていた。

  • 「こんにちは!」園内のあちこちで気持ちのよい挨拶が聞こえます☆☆

ドリームナイトから子どもたちの未来へ

ズーラシアの取り組みを参考にしたいと、さまざまな施設からの相談や視察が増えているという。

「ドリームナイトの輪は、確実に広がっています。ズーラシアでの開催は年に1回ですが、毎月全国のどこかの動物園でドリームナイトが開催されている。そんな日が来るかもしれません。博物館や美術館等の施設にも同様の取り組みが広がっていくことで、新しい扉が開かれるのではないかと楽しみにしています」と、松山さんの瞳が輝いた。

多くの施設の先駆けとなってドリームナイトをけん引してきたズーラシア、今後はどのようなことを目指していくのだろうか?

「1日限りの思い出ではなく、動物園での出会いや経験によって子どもさんの興味や関心が広がっていくような企画に育てていくこともドリームナイトを継続していく意義であると考えています。自分も動物も同じ『命』なんだと気づいてくれたり、『動物園で働きたい!』と思ってくれたり、そういう子どもさんが増えたら嬉しいですね」そう言って、須田さんがほほ笑む。

ドリームナイトから、子どもたちの未来へつながる希望を感じた。

※ジブラルタ生命は、2012年からズーラシアのドリームナイト・アット・ザ・ズーに協賛しています。