ボランティア・スピリッツ賞(アワード)

ジブラルタ生命・プルデンシャル生命・PGF生命ほか主催/文部科学省後援
PRUDENTIAL SPIRIT OF COMMUNITY(通称:SOC)
ボランティア・スピリット賞(アワード)

伴走は一朝一夕にして成らず

森田 晴香さん(岡山市岡山後楽館高等学校1年)
第18回ボランティア・スピリット賞 コミュニティ賞受賞

『ももたろうパートナーズ』との出会い

『ももたろうパートナーズ』(通称『ももパ』)は、視覚障がい者と伴走者でつくるランニングの団体だ。小学校低学年の児童から70代までの幅広い年齢層が集まりランニングを楽しんでいる。フルマラソンを完走するランナーもいるそうだ。森田晴香さんは、『ももパ』の活動を手伝いながら、伴走の経験を積んでいる。
幼いころ盲導犬訓練士に憧れていた森田さんは、小学校4年生の時に岡山市で開催された『山陽女子ロードレース』で、視覚障がい者ランナー(以下、ランナー)と伴走者に出会う。
「目が見えないのに颯爽と走る姿や伴走者との息の合った足運び、ゴールを切った時の笑顔がすごく素敵でした。『目が見えないのに走れるのはどうしてだろう?私にはとっても不思議でした。もし自分に力があったら伴走のお手伝いがしたい』という想いを、地元の新聞に投稿したんです。記事を読んだ『ももパ』の方が、新聞社を通じて『一度、活動に遊びに来てください』って、手紙をくれたんです」。以来、週末の練習には、ほぼ欠かさず参加している。

一緒に走ることが楽しい! 森田 晴香さん

ランナーの目になる

ランニングは、『視覚障害者』『伴走』と書かれたベストを着用して行う。これが周囲への注意を促す。ふたりをつなぐ伴走ロープを握ってスタート。二人三脚の要領で足並みと呼吸が合ってきたら速度をあげる。
「伴走者は、ランナーの目。先を読んで、安全に気持ちよく走れるように『段差があります。右に曲がります』と、声をかけて導きます。伴走ロープを上げたり下げたりすることで段差を、内側に引くことで障がい物を知らせることもできます。ペアになるのに性別や年齢は関係なく、歩幅とリズムが合うと相手が走りやすいです」。担当もトライさせてもらったが、なかなか足並みがそろわず50m足らずでギブアップ。簡単にできることではない。

ペアでベストを着用
心もつなぐ伴走ロープを握って

森田さんが活動を始めて6年。ランナーから学ぶことも多い。
「伴走者がトレーニングを積んでいないと経験豊富なランナーのスピードについていけません。練習でも5kmくらい走る時があるんですよ。光を全く感じない全盲の方やわずかに見える弱視の方など、見え方は人それぞれです。だから、人によって声がけも変わってきます。怪我や事故が無いように安全に走ることが何よりも大切。周りに気を配って伴走しています」。

広がれ!想い

活動を継続する中で、『伴走教室』の開催にも関わるようになった。
「『伴走教室』では、アイマスクや視野を狭くするメガネをかけて視覚障がい者の見え方を体験してもらいました。64名が参加してくれたんですよ。盲学校の生徒とも友達になりました。興味を持ってくれる人が増えると嬉しいです。家に閉じこもりがちな視覚障がい者の方たちにどんどん外出してもらえるよう、活動を発信していきたいです」。
活動を広めたいという想いは、コスタリカや中国へも伝播している。
「ホームステイで受け入れた留学生達が『ももパ』に参加してくれて、故郷に戻り伴走を始めたと、連絡をくれました。海外でも活動を伝えて行きたい。今は、『こんなことをやってるよ』って、地道ですけどメールで発信し続けて活動を育てています」。

参加者のがんばりを称えて賞状を贈呈

見守ってくれる人がいるから

練習で走って、世間話をしている時間が一番楽しいと森田さんは笑う。
「おしゃべりをしながら走っていると、伴走している感覚を忘れてしまうことがあるんです。『ももパ』最年少の伴走者だった小学生の頃からみんなが気をつかってくれて、『晴香ちゃん、一緒に走ろうよ!』と声をかけてくれたから、長く続けられたんだと思います。家族の協力も大きい。一人では練習場所に行けなかった小学生の私に付き合って、家族が一緒に参加してくれました。今回のボランティア賞も兄が教えてくれたんですよ」。

帰省中のお兄さんも参加
大好きな『ももパ』の仲間たちと

練習場には、にぎやかな声、笑いが飛び交う。ランナーが、「マラソンは孤独な競技だって言われているけれど、私たちは隣に伴走者がいてくれるでしょう。楽しいですよ。晴香ちゃんの、はつらつとした声を聞くと元気が出ちゃう」と、共に走る楽しさを話してくれた。
『ももパ』のメンバーそして家族が森田さんの成長をあたたかく見守ってくれている。
冬の空の下をランナーと伴走者が駆け抜けて行った。