ボランティア・スピリッツ賞(アワード)

ジブラルタ生命・プルデンシャル生命・PGF生命ほか主催/文部科学省後援
PRUDENTIAL SPIRIT OF COMMUNITY(通称:SOC)
ボランティア・スピリット賞(アワード)

「誰かがやってくれる」その「誰か」でありたい

京都八幡高等学校 南キャンパス ボランティア部
第19回ボランティア・スピリット賞 コミュニティ賞受賞

補い合うのは当たり前

2つの専門学科(人間科学科・介護福祉科)を擁する京都八幡高等学校 南キャンパス。「人の命に関わる仕事」や「人を笑顔にする仕事」を志す生徒たちがこの学び舎に集っている。
南キャンパスと同じ敷地の中には、肢体不自由や知的障がい、発達障がいなどのある小・中・高校生が通学する京都府立八幡支援学校もあり、年に2回の交流授業(人間科学科)、文化祭や体育祭等の行事交流に加えて、週に3回行われる昼休み交流(希望者)で支援学校の児童生徒と親交を深めている。
障がいのある児童生徒たちとの交流に、身構えてしまうことはないのだろうか?
「私も相手もひとり一人が違った個性の持ち主。相手の特性に合わせて何ができるかな?楽しく過ごすにはどうしたらいいかな?ということは、いつも考えていますが、障がいが『ある』とか『ない』とかを、意識したことはありません」
「隣の学校の児童生徒同士が仲良くするのは、当たり前のことなので」と、シンプルな返事が返ってきた。南キャンパスの生徒らにとって支援学校の児童生徒たちとの交流は特別なことではない。

京都八幡高等学校 南キャンパス  ボランティア部のみなさん
※取材に協力してくれた
玉田さん、松本さん(1年生)
内藤さん、明石さん、山田さん(2年生)

南キャンパス ボランティア部

そんな生徒たちの中でも、とりわけ高い志を持って活動を続けているのがボランティア部だ。メンバーらは、校内の清掃、点字や手話の習得、赤い羽根共同募金の呼びかけなどを行っている。八幡支援学校の児童生徒との交流にも積極的で、昼休み交流には欠かさず参加している。
どんな風に、いろいろな特性のある児童生徒と仲良くなっているのかメンバーらに聞いた。
「まず挨拶ですね。『こんにちは』から始めます。天気や自己紹介、相手が好きなコトを聞けば話題も広がります。何にも難しいことはしていないので・・・」と、はにかみながら答えてくれた。
なかには、障がいの特性で心を閉ざしたままの生徒やおしゃべりが苦手な生徒もいる。そんな時は、そっと寄り添い続ける。
「少し戸惑いましたが、『あなたが隣にいてくれるだけで嬉しいって思っている子もいるんだよ』と、支援学校の先生が教えてくださって、肩の力が抜けました」
心地よい距離で共に過ごせる友だち。それがボランティア部のメンバーだ。

  • 普段は、清掃活動に励んでいます
  • 募金の呼びかけ

『みんなのいえ』での交流

ボランティア部では3年前から、障がいのある児童生徒が放課後や長期休暇中に利用する福祉施設『みんなのいえ』のボランティアに参加している。
春・夏・冬の長期休暇中、メンバーらは交代で『みんなのいえ』を訪問。施設の職員の方々に指示を仰ぎながら、一人ひとりが考えて行動する。
児童生徒1人に対してボランティア1人。その日に担当する子どもさんと行動を共にして、着替え、食事、移動などの手伝いをしながら遊び相手になる。
「朝のミーティングで担当する子どもさんの特性と必要な配慮が、申し送りされるので、それを自分で汲み取りながら交流しています。子どもさんの希望を考慮して、1日のプログラムが組みたてられていて、買い物や外食、プールなどにも行くんですよ」

自己紹介は仲良しのはじまり
一緒ならこんなこともできちゃう

任されることに手ごたえを感じているが、毎回、受け持つ相手が変わる難しさや思わぬ出来事への対応に悩むこともある。
「例えば『この子には、自分の世界があります』という申し送りがあります。でも、その子の世界に別の子どもが入ってきたらどうなるのか?ということまでは申し送りがなくて、突発的な事柄にぶつかることもあります。状況によっては、子どもさんがパニックを起こして手をあげてくることもあって対応に困ることもあります」
メンバーらは、その時に出来得る最善の方法を考えて、子どもたちと向き合って解決する。
「その子の特性をきちんと理解できていないまま、『こうやれば大丈夫』と、独自の判断でとった行動が原因でトラブルが起こった時は、すごく反省しますが、辛いと思ったことはないです。失敗は、学びのチャンス。次はお互いにもっと楽しい時間を作れるように努力したいです」

メンバーらは、反省点を共有して、誰が担当になっても同じあやまちは繰り返さないよう心がける。最近では、「ぜひ、うちにもボランティアに来てほしい」と、別の施設からも声がかかる。
「最初は、みんな見よう見まね。いろいろ失敗もしてきました。自分が今まで蓄積してきたことをきちっと後輩たちに引き継いでいくことが大切だと考えています。たくさんの施設のボランティアに関わってみたいという気持ちもありますが、『みんなのいえ』の活動が何年も継続できるようにしっかりとした土台を作りたいです」と、部長の明石さんは語る。

人と向き合う喜び

取材に協力してくれたメンバーに、一番嬉しかった思い出を尋ねると、心から通じ合えた瞬間が次々と飛び出してくる。
「緊張すると教室から出て行ってしまう生徒さんがいて、先生が促してもなかなか教室へ戻ってこなかったのですが、私が『戻ろう』って手を差し伸べたら、握ってくれて一緒に戻ってくれました」(2年生 山田さん)
「名札をつけていても、関心を持ってもらえることはめったにないんです。何回も一緒にお弁当を食べて、少しずつ仲良くなって、最近、初めて名前を呼んでもらえました」(2年生 内藤さん)
「体にハンディのある男の子の介助で一緒にプールに入った時、普段はあまり感情を表情に出さない子だったのですが、すっごく嬉しそうな顔をして笑ってくれたことが一番印象に残っています」(2年生 明石さん)
「自分は、あまりしゃべるのが得意じゃなかったので、自信がなかったのですが、別れ際に『次はいつきてくれるの?また来てね!!』って言ってくれたんです」(1年生 玉田さん)
「自然と私のところでお昼寝をしてくれたのが可愛くて、安心してくれているのかなって、すごく嬉しかったです」(1年生 松本さん)

隣にいるだけで嬉しい
ボランティア部全員集合!!

一緒に過ごす人たちが、たくさん笑ってくれると自分たちも笑顔になれるから、もっと楽しめる遊びを企画したいと意欲をのぞかせる。
「相手が嬉しいと思ってくれることが、何よりも励みになっています。『誰かがやってくれる』その『誰か』が、いつも『自分』でありたい。そして、誰しもがそういう想いをもてるような輪を広げたいです」そう言って、メンバーらはほほ笑む。
素直さ、謙虚さ、感謝、いつも絶えない笑顔。ボランティア部のメンバーの放つ優しさが、周りの人の心をときほぐしているようだ。