ボランティア・スピリッツ賞(アワード)

ジブラルタ生命・プルデンシャル生命・PGF生命ほか主催/文部科学省後援
PRUDENTIAL SPIRIT OF COMMUNITY(通称:SOC)
ボランティア・スピリット賞(アワード)

誰もいなくなったスタジアムに残されたゴミを拾う

三上 雄斗(受賞時:サレジオ学院中学校3年生)

第22回ボランティア・スピリット・アワード 
コミュニティ賞(中学生の部)

帰りの電車を待つ間

三上さんは他校の友人と二人で、試合後のサッカースタジアムの清掃を行っている。

「試合直後の電車の混雑がいやで、スタジアムに残ってゴミ拾いをしてみようと何となく始めたのがキッカケでした。みんなマナーがいいので、試合終了後にゴミがひどく散乱してたわけではないんですけど、人気のない会場にいるとポツポツと残されているゴミが目に入ってくるようになって片付けたいなと思うようになりました」

三上さんがゴミ拾いをしているのは7万人もの観客を収容できる大きなスタジアム。このスタジアムでは、試合終了後にスタッフが清掃を行っているので、自発的にゴミ拾いをする観客はいなかったそうだ。

それでも三上さんは、スタジアムがクローズするまでの時間、自分たちができる範囲で協力しようと思い立ち、友人と二人でゴール裏エリアのゴミ拾いを始めた。

一番多いのは飲みかけのペットボトル。これを持参したビニール袋に回収していく。他にも紙くず、お菓子のパッケージなどが残されているが、意外に多いのが水筒だという。

「水筒はゴミというより忘れ物ですね。ペットボトルも未開封のものがあるので、うっかり忘れて帰ってしまう人が多いのだと思います。水筒は事務所に預けて、忘れた方が取りに来られたときに渡してもらえるようにしています」

  • 飲み残しゴミは、中身の処分から引き受けます

もう帰りなさい

電車の混雑を避けるための時間つぶしに始めたゴミ拾いだったが、気がつくと2年以上も続けていた。

三上さんたちのゴミ拾いは、次第にスタジアムのスタッフの目にも留まるようになる。

「始めた頃は、警備の方に『もう大丈夫ですから、帰ってください』とよく声をかけられました。観客が、そんなことをしなくてもいいと思われたんでしょうね。区切りのいい所までやらせてくださいとお願いしてやらせてもらっていました。ある日、お菓子袋の中身が散らばっていて苦労して掃除をしていたのですが、『時間も遅いし、もう十分ですから』と、途中で帰されてしまって、最後までやり切れずに残念な思いをしました。それから決められた時間の中で、効率よくできるように手順を考えるようになりました」

観客が帰った人気のないスタジアムには、「一緒にやりますよ」と言って手伝う人もいなければ、ゴミ拾いに気づく人もいない。友人の都合がつかない時には、たった一人でゴミ拾いをすることもある。それでも試合観戦に出かけたら必ずやるということをルールにしてやり遂げている。

「少しずつでも続ければ習慣になり、続けるのが苦にならなくなります。今は、スタッフの方にも顔を覚えてもらって『いつもありがとう』と声をかけていただく機会も増えました。感謝していただけるのは嬉しいです。でも、それ以上に夜の静けさに包まれたスタジアムで風に吹かれるのが気持ちいいんです。人のいないスタジアムの風景を独り占めできることが嬉しくて僕はゴミ拾いを続けているのかもしれません」

  • 終始落ち着いた雰囲気で話す三上さん
  • 誰もいないスタジアムを独り占めする時間が好き

変わらないこと変えていくこと

今後も変わらず、この活動を続けていきたいという三上さんだが、この春からは、たった一人の仲間が引越してしまうため、完全に一人の活動になってしまうという。

「ボランティア・スピリット・アワードのブロック表彰式で、他校の生徒が、『人が集まらなくてボランティアの存続が危ういので、SNSを利用して人集めをしている』と発表しているのを聞いてすごく参考になりました。ゴミ拾いも仲間がいたから始められたんだと思います。これからは僕が発信者になって、仲間を集める工夫をしていきたいです」

大きなことじゃなくていい。目立たなくてもいい。やろうと決めたことにしっかりと向き合う三上さんの姿勢にエールを送りたい。

  • みんなサレジオ学院生
    高木先生と猪村LCに囲まれて

中学3年生全員がボランティア・スピリット・アワードに応募したサレジオ学院

三上雄斗さんが在籍するサレジオ学院中学校では、中学校3年生全員(184人)が夏休みに、自分の行ったボランティアをまとめ、第22回ボランティア・スピリット・アワード(以下、SOC)に応募するという課題に取り組みました。

校内でSOCのプログラムの魅力を伝え、生徒のみなさんの応募の取りまとめをしてくださったサレジオ学院中学校の高木俊輔先生と、今回の応募のきっかけを作った東京第4支社一橋第五営業所の猪村 悠(いむら ゆう)ライフプラン・コンサルタント(以下LC)にお話を伺いました。

  • 高木俊輔先生
  • 猪村悠LC

-どういった経緯でサレジオ学院にSOCの応募をご案内したのでしょうか?

[猪村LC]
サレジオ学院は私の母校です。卒業後も学校にお邪魔したり、学校のFacebookを見たりして、生徒のみなさんの様子を気にかけていました。そこで、ジャグリング部のみなさんが介護施設の訪問をされているとか、街頭募金をされているとか、熱心にボランティアに取り組んでいるの知りまして、SOCが生徒のみなさんの振り返りや、新たな出会いにつながる機会になるのではと思いご案内しました。

-案内を受けて学校ではどのように展開されたのでしょうか?

[高木先生]
ミッションスクールであるサレジオ学院では、人のために役に立つことを自分で探す姿勢を理念として掲げています。ボランティアの精神を称え合うSOCプログラムは、私たちが目指す精神と親和性が高く、非常によいプログラムだと思いました。

本校は、中高一貫校なので部活を引退してから時間に余裕ができます。その時間を有意義な使い方にしてほしかったので、ボランティアをテーマとしたSOCへの応募を中3の生徒の夏休みの宿題とすることにしました。
宿題にすることについてはいろいろな捉え方があると思いますが、最初から人のために何かやろう思ってできる生徒が少ないのであれば、誰かが背中を押すことも一つのきっかけとしては決して悪いことではないと捉えました。そして、やってみた生徒自身が大切なことだとか、継続したい気持ちなどに気づく機会になればよいと考えました。

-SOCを宿題に取り入れてみていかがでしたが?

[高木先生]
とてもよかったと思います。今回、受賞した三上くんのように継続してボランティアに取り組んでいる生徒がいることを私たち教師も知ることができましたし、ボランティアは初めての挑戦という生徒が、「何かボランティアありますか?」と、職員室を訪ねてきたり、保護者が勤める施設に問い合わせてみたりというアクションを起こしてくれました。物事に関心を持って取り組むという点で最大限の効果があったと思います。

-今回のサレジオ学院の取り組みを卒業生としてどう思われましたか?

[猪村LC]
卒業生として後輩の活躍や母校を多くの人に知ってもらいたい、応援したいという気持ちがあります。SOCのプログラムが生徒のみなさんの行動や気づきとなったこと、他校の生徒にサレジオ学院を知ってもらう機会となったことがとても嬉しいです。これをきっかけに、多くの後輩たちがボランティアに興味をもってくれることを願ってやみません。