ボランティア・スピリッツ賞(アワード)

ジブラルタ生命・プルデンシャル生命・PGF生命ほか主催/文部科学省後援
PRUDENTIAL SPIRIT OF COMMUNITY(通称:SOC)
ボランティア・スピリット賞(アワード)

心も磨く清掃活動

岡山市立岡北中学校ボランティア同好会

第22回ボランティア・スピリット・アワード 
コミュニティ賞(中学生の部)

生徒会の活動だけでは足りない

取材の日、岡北(こうほく)中学校では、1年生から3年生の有志がボランティアで一斉清掃にあたっていた。校庭の落ち葉清掃を行う1年生、側溝の中のゴミをさらう2年生、廊下や階段のワックス清掃を行う3年生。学校のあちこちで、作業の指示の声が聞こえ、「はーい」と元気な応答が聞こえる。

  • 落ち葉清掃を行う1年生

ボランティア同好会は、今回のような清掃を中心にさまざまなボランティアを企画して活動を行っている。2018年度に企画したボランティアは7回。校庭の草抜きや落ち葉拾い、校内の一斉清掃など校内美化に力を入れるほか、PTAと協力して花の苗を植えたり、地域の商店街の企画に協力して戦没者慰霊のための千羽鶴の吹流しを作ったりしている。

取材では、生徒会とボランティア同好会を兼務して2018年度のボランティア活動を引っ張ってきた橘鷹 創汰(きったか そうた)さん、福田 愛凜(ふくだ えりん)さん、岸本 倖実(きしもと ゆきみ)さん、岸本 奈那美(きしもと ななみ)さんの4人にお話を伺った。

「先輩の代から生徒会活動の中でボランティアはやっていましたが、回数が少なく、みんなの関心が薄いなと感じたので、ボランティア中心で動ける会を作ってボランティアを活性化していきたいと思いました」

同好会を作ったからといって、生徒たちがすぐにボランティアに積極的になった訳ではない。「ボランティア同好会ってなに?」という反応が大半で、みんなで取り組もうという雰囲気にはなかなかならなかった。

そこでメンバーは知恵を絞る。まず生徒会新聞や生徒たちが立ち止まりやすい職員室の前の掲示板でボランティアの案内を行った。

「興味を持ってもらえないと何も始まらないので、どんなボランティアなのか、どんなことに役立つのか、みんながイメージしやすいように内容は詳しく書きました」

お昼の校内放送も積極的に利用した。「ボランティア同好会のお知らせです。今日の活動内容は○○です。時間は○時から、○○を持ってきてください」と声でお知らせすることで、多くの生徒が自然と耳を傾けるようになる。

また、校内の流しの下を「きれいに掃除した場所」と「全く掃除しない場所」の半分に分けて、汚れ方の違いを見せる実験を行ない、「みなさんは、どちらが気持ちよく流しを使えますか?」と、生徒たちに清掃する意味を問いかけた。こうした工夫が多くの生徒の心を動かし、「きれいにした方が自分たちも気持ちいいよね」と清掃ボランティアへの関心につながった。

働きかけの甲斐あって、今では70名近い生徒がボランティア同好会の会員に登録し、ボランティアのある日には、登録者の90パーセント以上が参加してくれるという。

  • 側溝のゴミをさらう2年生

トイレ清掃からの学び

校内で清掃への関心が高まっていることを感じたボランティア同好会では、生徒会の意見箱にトイレの汚れについての投書が多く寄せられていることに目を向け、トイレ清掃の企画に乗り出す。

「トイレがくさいという声が多かったのですが、見えない臭いはどうやって掃除をしていいのか分かりませんでした。そこでプロに教えてもらって、生徒みんながトイレをきれいにし続けられるようになればいいと考えました」

先生方とも相談し清掃のプロである『岡山清掃に学ぶ会』の方を招いたボランティア講習会を開催。講習会では、同好会の会員全員がスポンジを持ちトイレの清掃を行うことはもちろん、トイレ清掃の知識やコツを身につけるために男子と女子それぞれトイレを入れ替えた清掃体験や和式・洋式・男性用などトイレの構造の違いによって汚れのつき方が違うことなども学んだりした。

「みんな最初は、嫌がっていました。講師の方がトイレの水の流れていく奥が臭いの元だと教えてくださったので、手を入れてスポンジを使って磨いていきました。そうすると臭いがなくなったんです。そうしたら手が止まらなくなってきて、もっときれいにしたいって、気がつくとみんなで黙々とトイレを磨いていました」

「掃除をすると心も磨かれるなと思いました。きれいにして汚れと一緒にトイレ掃除に対する抵抗感もはがれていった気がします」

「嫌だと思っていたトイレ清掃に全く抵抗がなくなり、汚れていれば自然と手が動いてきれいにできるようになりました」と4人は笑顔で答えてくれた。

このトイレ清掃の体験を機に、清掃全般に対する意識も大きく変わった。『岡山清掃に学ぶ会』の方々は、「自分の目線と汚れやゴミとの位置を近づけて、小さな汚れやゴミにまで目を配ることで、よりきれいになる」と自分と汚れとの距離について考えてみることを生徒らに促したのだ。

トイレの裏までのぞいてみる。ホウキでゴミを掃く時には床に顔を近づけてみる。ゴミ箱をどけてその下にあるゴミに注意を払ってみる。すると普段、見落としがちな場所や細かい所など「ここまで掃除をする必要はないよね」とおろそかにしがちな場所の汚れが気になり始める。

「トイレだけではなく、教室の掃除も『学ぶ会』の方に教えていただいた心得やコツを思い出してやると、もっと隅々までやろうという気持ちになってきて、丁寧にやるようになりました」

「トイレの清掃体験をしてから、ボランティアの最後に気づきや反省などを記録する冊子に『大変だったけど掃除をするのが楽しかった』『掃除をしてよかった』という前向きなコメントが増えました。みんなに掃除をする意味が伝えられたと思うととても嬉しいです」

  • ボランティアの記録を書きとめていく冊子

行動することで後輩たちに清掃の素晴らしさを伝えたい

同好会を引っ張ってきた4人は、この春、中学を卒業する。卒業までの残された時間は、後輩たちが清掃ボランティアに積極的に取り組める心作りの手本を見せていきたいと言う。

「岡北中学校では、掃除中10分間はしゃべらない『無言清掃』に取り組んでいます。『無言清掃』は、3つの心(我慢する心・気づく心・助け合う心)を磨くことを目標にしています。実際に無言で集中して掃除をするといつもよりずっときれいになります。それに10分間おしゃべりを我慢できると、最後までちゃんとやり切れたという達成感があり、自分自身が成長できていると思えるんです」

「自分の心で感じて自分で動きたいと思えるようになることがボランティアの一歩だと思います。私たち3年生がしっかり『無言清掃』に取り組んで、後輩たちの心を動かしたいと思います」

「汚れと向き合い清掃をすることは、自分の心と向き合い心を磨くこと」
岡北中学校ボランティア同好会のみなさんは、清掃活動を通じて私たちにとても大切なことを教えてくれた。

  • 黙々と廊下や階段の清掃を行う3年生
  • ワックス清掃に参加した3年生のみなさん