ボランティア・スピリッツ賞(アワード)

ジブラルタ生命・プルデンシャル生命・PGF生命ほか主催/文部科学省後援
PRUDENTIAL SPIRIT OF COMMUNITY(通称:SOC)
ボランティア・スピリット賞(アワード)

東北の地に、ミツバチと笑顔をお届け

広島県立油木高等学校 ミツバチプロジェクト
第17回ボランティア・スピリット賞 SOC奨励賞受賞

壮大なストーリー

広島県立油木(ゆき)高等学校のある神石高原町には、約480ヘクタール(東京ドーム103個分)もの耕作放棄地があると言う。以前は農業や酪農業で使われていた土地だが、今では人も入れないほど雑草が生い茂る。

耕作放棄地を開墾して花畑にしよう、それだけじゃ経済的なメリットが生まれないからミツバチを飼って採れるハチミツを収入源にしたら地域活性化になるのではないか、という夢のあるストーリーを描くのが油木高校のミツバチプロジェクト。産業ビジネス科に通い農業や畜産業を学ぶ生徒たちは、授業で学習した養蜂の技術を活用し、「故郷を元気にしたい」という想いをつなぐ。ともすれば、負の遺産と思われがちな耕作放棄地が、実は宝の山になるという仮説を高校生がたて、それを実証、地域に発信し続けている。

一面の菜の花畑は、数年前に先輩たちが開墾した元耕作放棄地。今では、地元の方々が「高校生が荒れ地をここまできれいにしてくれたんだから」と、意志を継いで土地の手入れを続け、数軒がその近くでミツバチを飼う。
「ミツバチの飼育方法だけでなく、どうしたら町を活性化できるとか学べたのも良かった」と語る松田くん。「町を元気にしたいという想いがある、町が好きだから」という志は、しっかり地域の住民にも届いている

昨年、草刈りした菜の花畑!

花畑とミツバチで地域興し!

「最初はハチミツが好きでプロジェクトに参加したけど、だんだんミツバチに興味を持ち始めて今ではペットみたい!」と梅岡くん。「女王蜂は卵を生むのが仕事、雄蜂は働かず、蜜を集めてハチミツを作るのは雌の働き蜂。巣箱を内検(ないけん)する時にロウを傷つけてしまうことがあると働き蜂が修復してくれるんです。そういう働き蜂の行動が健気でかわいい」とミツバチの魅力を教えてくれた。

巣箱の内検では、巣枠を取りだし1枚ずつ確認する。
燻煙器の煙でミツバチを落ち着かせる。

その内検の時に欠かせない燻煙器(くんえんき)は、煙を吹きかけるとおとなしくなるミツバチの性質を利用するのだそう。燻煙器を極めている河上くんは「先に紙をいれて着火してから麻布(あさぬの)を入れると長持ちするんです。麻布も詰め過ぎると酸素不足になってすぐに消えるから調整が難しい」。他にも記録係など役割分担して作業が進む。
この日は、「女王蜂を作る」作業。「女王蜂の幼虫が入っている王台がいい形・大きさになっていたので、巣枠(すわく)を移動して新しい巣箱を作りました」と青木原くん。「先週の活動と比べることができるので変化がわかって楽しい!ミツバチの飼育の楽しさを発信していきたい」と語ってくれた。

養蜂技術を使って東北支援

2011年、宮城県で開催された農業大会に参加した先輩たちは、被災地の「すごい状態」をみて「何かしなきゃ!」と一念発起した。距離の壁、金銭面など様々な制約の中、大人が無理だと思ったことを乗り越えた高校生パワーの源は、これまでの地域興しの経験だった。「ミツバチを飼って地域興しをしてきたんだから、ミツバチで被災地支援をしたい」という強い意志が活動を成就させた。
ミツバチプロジェクトは、震災前にはイチゴの一大産地だった宮城県・亘理町のイチゴ農家さんにミツバチを贈る。昨年は15軒に合計15万匹をプレゼント。ミツバチは、イチゴの苗が並ぶビニールハウスに放され、イチゴの受粉を担う。
大量のミツバチを入れる段ボール製の巣箱は、交配用ミツバチを販売する企業から無償提供された。巣箱をチャーターバスの床下の荷物入れに積み、1,100kmを15時間かけて運ぶ。地元広島のバス会社が運行協力の手を差し伸べてくれた。地域を想って続けてきた活動が、「協力」という形となってこだまする。地元には他にも協力を申し出てくださる方が後を絶たない。
東北にミツバチを届けたメンバーの一人、平石くんは「行くだけで片道15時間かかったからキツかったけど、自分たちが持って行ったミツバチが飛び回るところや農家さんの笑顔を見ることができて自分たちも嬉しかったです」。3年目の今年も、種バチから増やして東北に贈る計画だ。

枠からせり出ているのが王台。

ミツバチプロジェクトの挑戦

開墾した耕作放棄地が、黄色いじゅうたんに!

4年前にスタートしたミツバチプロジェクトは、毎年農業系をはじめ、さまざまな大会に参加、素晴らしい成績を残している。先輩らを誇らしく思い、憧れている。「自分たちも先輩たちが出た全国大会に出場したい」「優勝したい」という気持ちもさることながら「これまで敵わなかった他の学校のプロジェクトに今年は挑みたい」という頼もしい声も。