ボランティア・スピリッツ賞(アワード)

ジブラルタ生命・プルデンシャル生命・PGF生命ほか主催/文部科学省後援
PRUDENTIAL SPIRIT OF COMMUNITY(通称:SOC)
ボランティア・スピリット賞(アワード)

地域猫活動をご存知ですか?

新宿山吹猫クラブ(東京都立新宿山吹高等学校)
第17回ボランティア・スピリット賞 ブロック賞受賞

猫ってこんなに魅力的

猫のどんなところが好き?新宿山吹猫クラブ(通称:ねこ部)の部員たちに尋ねてみた。「自由に生きるのよっていう潔さ」「毛布とかをフミフミして甘えるのが、超かわいい!」「柔らかいとこ」。みんな猫が大好きなのだ。
「学校周辺には、野良猫が多いんです。ひょっこり顔を出して道端で会議を始めたりしてかわいい。でも猫がゴミをあさったり、庭をトイレにしてしまったりして、トラブルが起きるんです。殺処分されてしまう可能性だってある。地域の人と関わり合って本気で猫を助けたいって思って、『地域猫活動』に興味を持ちました」。

猫が好き!新宿山吹猫クラブ

地域猫活動ってどんなこと?

『地域猫活動』とは、飼い主のいない猫のためにエサ場やトイレを設置し、食べ残しや糞尿を片づけたり、里親を募集したり、繁殖を抑制するための不妊去勢手術を行ったりして、猫と人とが『共生』できる環境を整えていく活動だ。
ねこ部の主な活動は、『地域猫活動』を行っている地域の『猫ボランティア(通称:猫ボラ)』のサポートと『地域猫活動』のPR。
この日は、猫のトイレづくりに励んでいた。校内で不要になった新聞紙を集め、トイレ砂の代用品を作る。「野良猫の一時保護をしている猫ボラさんに届けます。頼りにされているなって思うと、がんばれちゃう」。猫談義に花を咲かせながら、新聞紙をちぎって、割いて、あっという間に山ができる。

古新聞をトイレ砂のかわりに

猫のためにできること

ボランティア・スピリット賞で得た『活動支援金』で、エコバッグやTシャツ、手ぬぐい等のグッズを製作し、文化祭や地区のバザーで販売。収益は、避妊去勢手術費用として寄付した。
「これ、さくら猫なんですよ」。グッズには、耳をV字にカットされた猫がデザインされている。避妊去勢手術が済んだ証としてカットされた耳が、桜の花びらのように見えることから『さくら猫』と呼ばれるそうだ。商品を手にした人に「なんで耳が切れているの?」と興味を抱いてもらうことで、コミュニケーションが生まれ『地域猫活動』に触れる糸口となる。
最近は、里親募集の手伝いも始めた。部員が手作りのポスターを校内や近所の店舗に貼りに行く。『とっても人懐っこいコです』、『臆病だけど賢いです』。紹介文が心憎い。部員たちの努力の甲斐もあって、校内でも「里親になるよ」と声をかけられる機会が増えた。
とはいえ、『地域猫活動』の認知度はまだまだ低い。校内や近隣の地域でプレゼンを行い積極的にPRに努めている。
「『地域猫活動』や『猫ボラ』のことを知らないから、誤解も生まれるんです。『野良猫に勝手にエサなんかあげて迷惑だ』とか、厳しいことも言われます・・・でも、相手の考えていることを聞くことで、物の見方が広がるし、相手の言っていることがすべて正しいとは限らないから、自分の意見を伝えることが大切だと思う。『高校生がこんな活動をしてるんだね。がんばって!』って手紙をもらった時は、気持ちが通じたんだって、すっごく嬉しかった。猫が私たちと人をつないでくれている。猫が私たちを成長させてくれているんです」。
嫌いな人にとっては害。好きな人にとっては家族のような存在。意見が割れる難しい問題だが、PRこそ猫を守る一番の方法と、部員たちは真っすぐな瞳で向かっていく。昨年までは、新宿区内中心の活動だったが、『地域猫活動』について聞くなら『ねこ部』との評判を聞いた区外の自治体や大学からも講演を依頼されることがあるという。

  • 部員がデザインした『さくら猫』
  • 飼い主さんを待っています

命と関わる決意

活動の広がりが、嬉しい半面、命を扱う活動。悩みぬいて、決断を下さなければならないこともあったという。
「不妊去勢手術をするってことは、猫は子どもを産めなくなるってこと、苦しいことだと思うんですよ。それって正しいのかなって?すっごく悩んだ時期があって、人間の勝手かもしれないけど『共生』するためには必要なこと、仕方ないって割り切ったんです。そう決めたから、自分たちの責任でゴールまで考えよう。使命だって思いました」。
部員たちが考えるゴールは、一体どこにあるのだろうか?
「時間はかかるかもしれないけど、住民一人ひとりに『地域猫』をどうしたいのか考えてもらうこと。その意見を僕らがひとつにまとめて、『地域猫活動』に地域がどう関わっていくのかっていう答えが出たら一区切り。ゴールなんじゃないかなと思ってます」。
彼らの目指すゴールの『答え』は、私たちに問いかけられている。

  • 猫に出会ったら、少し考える
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